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褥瘡予防と室内の湿度管理|空間環境の視点

time 2026/02/06

褥瘡(じょくそう)の予防といえば、体位変換、体圧分散マットレス、栄養管理、そしてスキンケア。これらは介護の現場で広く知られている基本的な対策です。

本記事では、これらに加えて「居室の空気環境」、なかでも室内の湿度に着目します。褥瘡の治療や医学的な判断は医師・看護師の領域ですが、利用者が日々過ごす部屋の空気が乾燥しているかどうかは、介護に携わるすべての方が関われるテーマです。

※褥瘡の基本的な定義や原因については、当サイトの用語解説ページ「褥瘡(じょくそう)とは?」をご覧ください。

高齢者の皮膚はなぜ乾燥しやすいのか

加齢に伴い、皮脂の分泌量や角質層の水分保持力は低下していきます。皮膚の表面には、汗と皮脂が混ざり合った膜があり、これが外部の刺激から肌を守り、体内の水分の蒸発を防ぐ「バリア機能」を担っています。高齢者はこのバリア機能が弱まっているため、もともと皮膚が乾燥しやすい状態にあります。

高齢者施設の入居者の約90%以上に皮膚の乾燥やかゆみ(乾皮症)がみられるという報告もあります※1

こうした皮膚の乾燥は、単に「カサカサして見た目が悪い」という問題にとどまりません。乾燥した皮膚は硬くもろくなり、わずかな摩擦やずれでも傷つきやすくなります。そしてこの皮膚の脆さこそが、褥瘡の発生リスクを高める要因の一つになるのです。

皮膚の乾燥と褥瘡の関係

日本褥瘡学会の「褥瘡の予防について」では、スキンケアの項目において「日頃より皮膚が乾燥しないよう保湿クリームなどを塗布することが大切です」と明記されています※2

また、在宅療養者の皮膚トラブルに関する解説では、ドライスキン(皮膚の乾燥)の要因として「加齢、低栄養などによる保湿能の低下」に加え、「低湿な住環境」が明示されています※3

つまり、皮膚の乾燥は体の内側の問題だけでなく、その方が過ごしている空間の湿度にも影響を受けるということです。保湿クリームを塗ることはもちろん重要ですが、塗った保湿剤の効果が発揮される「場」としての居室環境にも、目を向ける必要があります。

保湿剤を塗る「前」に、部屋の空気を見直す

冬場、暖房を使用した室内の湿度は20〜30%台まで下がることがあります。40%を下回ると、空気は「乾燥している」と言ってよい状態です。

そのような環境に長時間いれば、保湿剤を塗っていても皮膚の表面から水分は奪われ続けます。とりわけ、自力で移動したり窓を開けたりすることが難しい方の場合、乾燥した空気の中で一日を過ごすことになります。

保湿剤による身体へのケアと、室内の湿度を適切に保つことは、対立するものではなく両輪です。一般に、室内湿度は40〜60%程度が望ましいとされています。ただし、湿度の数値だけでなく室温とのバランスも重要で、同じ湿度50%でも室温が低い場合は体感的な「潤い」が異なります。

施設で湿度管理が行き届きにくい背景

特別養護老人ホームやグループホームなどの高齢者福祉施設では、室温の管理は比較的徹底されていますが、湿度の管理は後回しになりがちです。

理由は明確で、暖房は施設の空調設備に組み込まれていることが多い一方、加湿は個別に対応する必要があるためです。加湿器を導入するにしても、衛生面の管理、方式の選定、設置場所の配慮、給水の手間など、介護業務とは別の負荷が生じます。

しかし、褥瘡リスクの高い利用者が居室で過ごす時間を考えれば、その居室の空気が乾燥しているかどうかは小さな問題ではありません。体圧分散マットレスを導入し、体位変換のスケジュールを組み、栄養管理に気を配っていても、その部屋の空気が皮膚から水分を奪い続けているとすれば、予防の取り組み全体の効果に影響を及ぼします。

高齢者施設で加湿器を導入する場合は、利用者の特性(免疫機能の低下、認知症による誤操作の可能性、皮膚の脆弱性など)を踏まえたリスクの把握と、それに基づく運用上の対策が欠かせません。この点については「高齢者施設で加湿器を使う際のリスク|利用者特性と施設環境から考える」および「高齢者施設で加湿器を使う際の対策|継続できる管理を目指して」に詳しくまとめられています。

在宅でも同じことが言える

施設に限った話ではありません。在宅で介護を受けている方、とりわけ一人暮らしや老老介護の場合も、居室の湿度は見落とされやすい要素です。

訪問看護師やヘルパーが訪問した際に「この部屋、乾燥していませんか」と気づくことが、皮膚トラブルの予防につながる場合があります。実際に、在宅看護の文脈でも「皮膚が乾燥している場合、室内の湿度や衣服、寝具の適切性、水分摂取の量など、生活全体を点検しアセスメントする」ことの重要性が指摘されています。

湿度管理は、体位変換や保湿剤の塗布のように目に見える「ケア行為」ではないため、介護計画の中で位置づけられにくいという側面があります。しかし、利用者の皮膚を守る環境を整えることも、立派な介護の一部です。

「環境を整えること」も褥瘡予防の一部

褥瘡予防の基本は、圧迫の除去(体位変換・体圧分散)、栄養管理、スキンケア、そして全身状態の把握です。これらはいずれも利用者の「体」に対して行うケアですが、そのケアが行われる「場」である居室の環境も、予防を下支えする要素です。

介護ベッドや体圧分散マットレスを整えるのと同じように、室内の空気環境――特に湿度――にも意識を向けること。それは新しい負担を増やすという話ではなく、すでに行っているケアの効果を最大限に引き出すための環境づくりです。

実際に、特別養護老人ホームにおいて居室30台・共用スペース10台の計40台の加湿器をレンタルで導入し、居室ごとの湿度管理を実現した事例もあります(参考事例:特別養護老人ホーム(特養)での加湿器レンタルご利用事例)。こうした取り組みは、褥瘡予防に限らず、利用者の生活の質全体を支える環境整備の一例といえるでしょう。

まとめ

褥瘡予防は、体に触れるケアだけで完結するものではありません。利用者の皮膚を包んでいる空気そのものが、乾燥によって皮膚のバリア機能を損なう要因になりうるからです。

保湿剤を塗ること。体位変換をすること。栄養を管理すること。そして、居室の湿度を適切に保つこと。

どれか一つで十分ということはなく、複合的に取り組むことで、予防の質は高まります。ご家族の在宅介護でも、施設での集団ケアでも、「この部屋の空気は、あの方の皮膚にとって優しいだろうか」と一度立ち止まって考えてみることが、褥瘡予防の新たな一歩になるかもしれません。

参考文献・出典

※1 湧永製薬株式会社「高齢者の皮膚の乾燥とかゆみ」
https://www.wakunaga.co.jp/health_info/高齢者の皮膚の乾燥とかゆみ

※2 一般社団法人 日本褥瘡学会「褥瘡の予防について」
https://www.jspu.org/general/prevention/

※3 持田ヘルスケア株式会社「在宅療養者によくある肌トラブルとは?」
https://hc.mochida.co.jp/skincare/care/care9.html

持田ヘルスケア株式会社「高齢者の皮膚の乾燥を防ぐためのスキンケア」
https://hc.mochida.co.jp/skincare/care/care8.html

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