2020/05/02
人の生活は一日一日の積み重ねであり、それは何十年にも渡って繰り返されます。毎日何気なく、同じように繰り返している日常の動作でも、体の機能は、加齢と共に少しずつ衰えていきます。そしてその中で、知らず知らずのうちに様々なリスクが高まっているんです。
大切な方に、より安全に毎日を送ってもらえるように、今、一緒に生活を見直してみませんか?
今回は、生活動作の中でも特に重要な4つの場面での工夫を考えてみましょう。
1. 徐々に椅子やベッド生活へ切り替えることを検討しましょう
加齢と共に、筋力が低下したり、関節の軟骨がすり減りやすくなります。床からの起き上がりや立ち上がりには、全身の力が必要となり、膝や腰に痛みがある方にはとても負担のかかる動作です。そして、負担が多い動作というのは同時に、転倒や第2の痛みを生じるリスクを高めることになります。
高齢者の方が転倒した場合、足を骨折することも多く、入院生活は、認知機能の低下や更なる筋力低下を引き起こしかねません。親御さんから「最近少し起き上がったり、床から立ち上がることが大変になってきたな」なんて言葉を聞いた際には、ぜひ椅子やベッドでの生活に切り替えていく手助けや助言をしてあげてください。
また、椅子生活に切り替えた際に気をつけてほしいのは、足のむくみです。長時間、足を下におろした状態で座っていると、むくみに繋がってしまいます。血液の循環を良くするために、足先をパタパタと動かしたり、足を高い位置に置くなどの工夫も必要となってきます。
2. 車いすの操作に注意しましょう
車いすを介助者が操作する場合、気を付けたい点がいくつかあります。
まず、乗り降りする際には必ずブレーキをしっかりすること。
その際には、フットレスト(足を乗せておく板)をたたむこと。
そして、段差や坂道を上る際には前向き走行、下りる際には後ろ向きで走行することです。
車いすはとても便利な福祉用具ですが、使い方を間違えると、転倒してしまうなど、ケガをする恐れがありますので慎重に使ってくださいね。
3. 片麻痺や片足に痛み(筋力低下)がある方の階段の上り下りを工夫しましょう
日本の家や建物には段差や階段が多くあります。片麻痺や片足に痛み(筋力低下)がある方にとっては、階段の上り下りは恐怖心や転倒リスクがかなり高い場面となっています。ですが、そんな場面でも、ちょっとした工夫を覚えていることにより、上り下りがしやすくなります。
ポイントは『行き(上り)はよいよい、帰り(下り)はこわい』です。
段差を上る際には、良い方の足から上るようにして、下る際には麻痺や痛みのある足から下りる。そうすることで、より安定して上り下りができます。
4. お風呂は危険がいっぱい!安全策を考えましょう
入浴場面では様々なリスクが隠れています。
まずは、寒暖差に注意すること。ヒートショックと呼ばれる現象で、服を脱いで、脱衣所や洗い場が寒いのにも関わらず、暖かいお湯にいきなりつかると、血圧の急激な変動により脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性があります。脱衣所や洗い場は事前に温めておく必要がありますし、高齢者の方にとっては、実は『一番風呂』ではない方がより安全だったりします。
次に、転倒のリスクを軽減すること。入浴場面で利用する福祉用具は多数あり、介護保険でレンタルすることができます。体を洗う際には、シャワーチェアを利用したり、浴槽をまたぐ際には、手すりの設置やバスボード、浴槽内椅子などを利用したりして、できる限り安全に入浴できるよう環境設定をしてあげれば安心です。
以上の4つの場面、全てに共通して言えるのは、『転倒のリスクを軽減すること』です。
『転倒』と一口に言っても軽視できないもので、たった一回転んでしまった、それだけで、その後の生活環境やお体の具合に大きく影響する可能性があるんです。
今一度、親御さんの生活場面を見直してみて、危ない場面がないか、一緒にお話ししてみてください。
大切な方に、より安全に日常を送ってもらってえるよう、そして、元気に長生きしてもらえるよう、ご家族みんなで考えてみていただければと思います。