2020/05/02

新型コロナウイルスへの感染を避けるために高齢者が自宅に引きこもるケースが増えているそうです。皆様の親御さんはいかがでしょうか?
高齢者が自宅に引きこもることで心配になるのが「フレイル」と言われる状態に陥ってしまうことです。「フレイル」とは「虚弱」と呼ばれる状態のことで、”健康”と”要介護”の中間に位置し、身体機能や認知機能が低下している状態のことを指します。今回の記事では新型コロナウイルスの感染を予防しながら、フレイルに陥らないためにできることを、いろいろなケースに合わせて、できるだけ具体的にお伝えできればと思います。
ポイントは「らしさ」
一般的にフレイルを予防するために取り組むことが推奨されているのは、以下のようなことです。
・何もせずに座って過ごす時間を減らす
・筋力を低下させないために筋力トレーニングをする
・肉や魚などの動物性の食べ物を少しずつでも摂取する
・他者と交流をもつ
上記以外にもいろいろな方法がありますが、いずれにしても大切なのは継続して取り組むことです。とはいえ、急に始めてもなかなかうまくいかないものです。食べ物に関しては、よほどの偏食の方でないかぎり肉や魚を全く食べないというケースは稀と思われるので、比較的取り組みやすいですが、「今日から毎日スクワットをしてね」と言っても、多くの親御さんは(あるいは若い人でも)継続するのは難しいと思います。
そこで重要なのが「その人らしさ」を大切にすることです。
これまでやったことのない筋力トレーニングをすることや、口にしたことのない高栄養食品を、ある日突然に「いいことだから」と勧められても親御さんは戸惑ってしまうでしょう。高齢者の多くは、新しいことへの適応能力が若い頃と比べ低下している方がほとんどです。新型コロナウイルスへの感染対策という、これまでになかったことへの取り組みに加えて、なじみのないフレイル予防を新たに始めることは、親御さんにとってハードルが高く、心も体もついていきにくいものです。
なので、フレイル予防に取り組む際には、親御さんが好きなこと(好きだったこと)や性格に合った内容、これまでにやってきたことを中心にすえて、「その人らしさ」にウエイトを置いて考えるようにしてみると、ハードルが下がり継続もしやすくなります。
コロナ予防とフレイル予防をセットにしてみる
テレビやインターネットなどで新型コロナウイルスへの感染予防策やフレイル予防について調べてみると、多くの情報を見つけることができます。「情報について理解はできるけど、具体的にどうすればいいのかいまいちわからない」という方に向けて、高齢者の生活シーンを一部切り取り、コロナウイルスの感染予防とフレイル予防をセットにして、具体例をご紹介しようと思います。ぜひ考え方の参考にしてみてください。
農作業や散歩
運動不足を解消でき、気持ちに刺激が与えられるので、認知機能の低下を予防するという観点から見て、趣味としている親御さんにはぜひ続けていただいたいことの1つです。
ただし、他者と一緒に行う際には要注意。おしゃべりをしながら農作業や散歩をする場合、マスクをつけて唾液などの飛沫が飛ぶ範囲、およそ1~2mの距離をとることで感染予防につながります。
買い物
買い物を楽しみにしている親御さんも多いのではないでしょうか。歩く、品物を手に取る、見る、聞く、選ぶ、お金の計算など、買い物では身体面の動きと認知機能を使うので、フレイルの予防になります。
気をつけたい点としては、おしゃべりをしている人にはできるだけ近づかない、むやみに商品に触らない、手すりやエレベーターのボタンなど不特定多数の人が触るものに触った手で目や鼻、口を触らない、といったところです。そういったものに触れた際には、念入りに手洗いや手指の消毒を心掛けてください。
家族や友人との食事
しっかりと栄養を取ることで、心身機能を良好に保つことができ、フレイルの予防にもなります。また、食事をする場所への移動、食べ物を見る、匂いをかぐ、味わうなど、身体機能・認知機能を保つ要素が多くあります。加えて、家族や友人と一緒に食事をすることは、食欲の増進効果があったり、心によい刺激を与えてくれたりもます。
食事の際に意識したい感染予防策は、食べ物を一人分ずつ分けてお皿に盛り付け、複数の人の接触を避けるようにすることです。また、食前には手洗いや手指消毒をすることも大切です。食事中のおしゃべりについては、飛沫による感染リスクが高くなりやすいので、できるだけ控えたほうがよいでしょう。おしゃべりをするのであれば対面に座ることを避け、透明のプラスチック板やアクリルボードを用意して仕切りを作るのがおすすめです(ドラッグストアや日用雑貨を扱うお店、インターネット上の店舗で販売しています)。
最近は家庭内での感染も増えており、これまで通りの楽しみながら食事やおしゃべりができるように環境を整えることが大切だと言えるでしょう。
その他の趣味
感染を予防するために大切なのは目、鼻、口などからウイルスを体の中に取り込んでしまわないことです。親御さんの好きなことや趣味が感染のリスクが高いと感じた場合には、それに近い何かに置き換えることで楽しみや行動を続けられフレイルの予防につながります。
例えば、カラオケに行くことが好きな人であれば音楽番組を見る、スポーツ観戦が趣味であればテレビ中継を見るなどです。囲碁や将棋が好きな方であればパソコンやスマートフォンなどのアプリで遊ぶという方法があります。
新型コロナウイルスへの感染を避けるために大切なのは、正しく予防することに尽きます。漠然と過度に恐れる必要はないとも言えます。正しい予防方法で感染するリスクを下げながら、その人に合った生活を送り、フレイル・要介護の状態になることを予防していきましょう。