2020/05/02
前回の原因編に続き、今回は運動編です。前回も変形性膝関節症に対しての保存療法について書きましたが、保存療法の運動や動作についてより掘り下げたいと思います。
保存療法とは「手術は行わず、保存的な治療法」のことでしたね。言い換えると「手術をせずに今の膝関節のまま、できることをやりましょう」といったところです。この保存療法は変形性膝関節症に対する治療の基本となります。
症状が初期の頃は生活の改善や運動をするだけで、改善されることがよくあります。変形が進んだ方にもオススメの痛みの軽減方法や運動方法がありますので、ぜひ参考にしてみてください。
1、変形性膝関節症とは
膝には体重の何倍もの負荷がかかっているため、関節内の軟骨が擦り減ります。すると↑のイラストのように、太ももの骨とすねの骨が直接ぶつかって摩耗することで、強い痛みが起こります。これが変形性膝関節症です。
症状が進むと足の変形が起こりますが、日本人は和式の生活様式から、膝の内側の軟骨がすり減ってO脚変形になってしまうケースが大半なのも特徴です。
残念なことに一度擦り減った軟骨は元には戻りません。いかに変形性膝関節症と付き合っていくか、それが保存療法の真髄だと思います。
2、生活動作の改善
変形性膝関節症は軟骨が擦り減り、脚が変形していくため、膝に体重がかかればかかるほど進行していきます。保存療法の基本は進行をできるだけ食い止めることです。
日常生活を行っていると膝に負担がかかる動作、かかりにくい動作があります。どのように生活を変化させるべきでしょう。
(1)和式から洋式へ
上記でも少し触れましたが、日本人は生活様式があぐらをかくなど、膝を開いて足先を内に入れる場面が多いです。そのため、膝の内側の軟骨が擦り減りやすく、O脚に変形することが大半。また床に座ることも多く、代表的な和式トイレでもしゃがみこまなければなりません。
対して、洋式での生活様式は椅子に座ることが大半で、床からの立ち上がりに比べて膝の負担が圧倒的に少ないです。和の生活様式から、洋の生活様式へと変えるだけで、ずいぶんと負担が軽減されます。
(2)重い荷物を持たない
膝の軟骨は、自分自身の体重によって擦り減っていきます。つまり、重い荷物を持つとその分だけ膝に負担がかかり軟骨が擦り減るといったイメージです。重い物を動かすときは、荷台の使用や周りの人を頼るなどして自分で持ち上げない工夫が必要です。
(3)立ちっぱなしの作業は控える
立っていると、膝への負担はまぬがれません。座りながらできる作業は座りながら行いましょう。また、どうしてものときはこまめに座ることを意識しましょう。
3、どこを鍛えたらいいの?
膝関節への負担を軽減するためには、筋肉を鍛えることが非常に重要になります。
では、どこの筋肉を鍛える必要があるのでしょうか。
日本人の変形性膝関節症はほぼO脚に変形します。その状態で上から体重がかかると、O脚はどんどんひどくなってしまいます。進行を防ぐには膝のポジションを元に戻すための筋肉を鍛える必要があります。その筋肉とは、太もも前面の筋肉(大腿四頭筋)と内側の筋肉(内転筋群)です。さらに、大腿四頭筋の強化は膝への負担を軽減する効果があります。変形性膝関節症の人は大腿四頭筋の内側部分の筋肉が小さく委縮してしまっていることがよくみられます。
4、運動方法
運動の目的は体重減少、筋力増加が主です。
痛くて動けない場合でもできる範囲で動かしていきましょう。(痛いからといって動かさないと痛覚が過敏になり、炎症物質が過剰に出てますます痛く感じる状態に陥ってしまいます)
<体重減少>
体重を減らせば減らすほど膝は喜びます。痛くて動けない、運動どころじゃないなんて方にも行っていただきやすい運動方法があります。
①水中歩行
体重を水の浮力で減少し膝への負担がほぼ無い状態で、歩行をするという画期的な運動方法です。
市民プールなど公共の施設にはだいたい水中歩行専用レーンがあります。そして、たくさんの人が水中歩行を頑張っています。一見ハードルが高そうに感じますが、勇気を出して行ってみてはいかがでしょうか。
②自転車
自転車も水中歩行ほどまでありませんが、膝に負担が少なく体重減少が目指せます。普段あまり自転車に乗ってない方でも、自転車エルゴメーターという機械があります。病院やジムで見かけるあれです。一般的にはエアロバイクと呼ばれています。ホームセンターなどで比較的安価で購入も可能です。
③散歩
水中歩行や自転車と比較すると膝に負担がかかりますが、痛みがひどくならない程度であれば、大丈夫です。家の周りを20~60分程度、痛みがひどくならない範囲で行いましょう。この時、杖や押し車などあると体重が分散されてより良いです。また、サポーターで膝を保護することもオススメです。
<筋トレ>
筋トレでは、上述の筋肉(大腿四頭筋、内転筋群)を中心に鍛えていきます。
運動強度により膝の痛みが増す可能性がありますので、ご自身にあった方法を選んでください。回数は体調に合わせて調節しましょう。
①クッションつぶし(難易度★☆☆)
鍛えられる筋肉:大腿四頭筋
運動方法:
膝の下にクッションやボールを入れそれを押しつぶすイメージです。大腿四頭筋のトレーニングにもなりますが、変形性膝関節症は膝が最後まで伸びない方が多いので、伸ばす練習も兼ねています。ゆっくり行いましょう。
②クッションはさみ(難易度★★☆)
鍛えられる筋肉:内転筋群
運動方法:
仰向けになり膝を伸ばして脚の間にクッションやボールをはさみます。そのまま両脚でクッションを押しつぶします。爪先は常に上を向くようにかかとを滑らせながら行います。ゆっくり行いましょう。
③足上げ(難易度★★☆)
鍛えられる筋肉:大腿四頭筋の内側
運動方法:
椅子に座って片方ずつ足を上げます。このとき、爪先を天井に向ける意識で行いましょう。簡単にできる方は重りを付けるとより良いです。
また、できるだけ膝は伸ばすように意識しましょう。3秒かけて上げて、3秒かけてもどす。ゆっくり行いましょう。
④寝て足上げ(難易度★★☆)
鍛えられる筋肉:大腿四頭筋
運動方法:
仰向けに寝て、片方の脚は曲げて立てます。もう片方の脚は伸ばしてそのまま10~30㎝程度上に上げます。10秒上げて下ろします。これもゆっくり行いましょう。
⑤スクワット(難易度★★★)
鍛えられる筋肉:大腿四頭筋、内転筋群
運動方法:
お尻を突き出すようにして膝を曲げる。クッションが落ちないように意識しましょう。
難易度が高めです。膝に痛みや熱感がある方は止めておきましょう。
⑥横向き脚上げ(難易度★★★)
鍛えられる筋肉:内転筋群
運動方法:
横向きに寝て上側の脚を4の字に曲げ足裏を床につきます。上半身は肘をつきます。下側にある脚を上に上げ床から離します。爪先が下を向いたり上を向いたりしないよう気を付けましょう。
少し運動にコツがいりますが、写真を真似して行いましょう。ゆっくり行います。
保存療法の運動や動作に関して、お分かりいただけたでしょうか。
痛むからといって動かなければますます痛くなってしまいますし、体重も増えていってしまいます。そうすると、膝への負担がどんどん増してしまうことに…。
そうならないためにも、適度な運動をしっかりと行ない、いつまでも歩ける身体づくりをしていきましょう。
コメント
[…] ―― 体重を減らすということと、筋肉をつけるということについてなんですが、もう1つの記事の運動編のほうで、例えば、大腿四頭筋や内転筋群に筋肉をつけることで膝がサポートされるんだ、ということですが、大腿四頭筋と内転筋群を鍛えて太くすることで、なぜ膝がカバーされるんですかね。メカニズムとしてはどういうふうになっているんですか? […]
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