2020/05/02
高齢の親を介護する息子さんや娘さんから
「うちの親は年をとってまるくなったんですよ」
という話を聞くことがあります。
逆に
「最近、うちの親はイライラすることが増えて困っているんです。どうしたらいいでしょうか?」
と相談を受けることもあります。
どちらが多くて、どちらが少ないかを一概に言うことはできませんが、日本全体で見るとイライラしてキレてしまう高齢者が増えている傾向にあるようです。平成30年度版の犯罪白書によると70歳以上の高齢者が起こした暴行事件で検挙された人数は平成10年の時点では100人未満ですが、その後は増え続けて平成29年には2,338人となっています。
高齢者の数は増え続けているので単純に数字を見てその中身を推し量ることは難しいのですが、イライラとしてしまう高齢者が増えていることは確かです。
では、高齢者がイライラしてしまう原因とはいったい何なのでしょうか。そこには、高齢者ならではの原因があるので紹介をします。
高齢者がイライラしてしまう原因は大きく分けると
「身体の変化」「認知症によるもの」「社会的な環境の変化」
の3つです。
<身体の変化>
・体力や身体能力、免疫力の低下
・男性ホルモン、女性ホルモンの低下
・難聴
・怒りをコントロールする脳(前頭葉)の機能低下
・脳梗塞や脳卒中が原因で感情のコントロールができない(感情失禁)
・不眠、便秘、脱水による体調不良など
<認知症によるもの>
・感情のコントロールがうまくできなくなる
・認知症の種類によっては、人を疑う気持ちが強くなることや他人を信頼できなくなることがある
・自身の周りで起こっていることを理解できずにストレスを抱えてしまう
・物忘れや新しい記憶が抜け落ちわからないことが増える
・ものごとを判断する能力が低下してしまい失敗することが増える
・時間や場所、人についてわからなくなってしまう
・これまでできていたことができなくなる
・薬の副作用など
<社会的な環境の変化(生活の変化を含む>
・家庭内での孤立や役割の喪失
・地域とのつながりが希薄になる
・承認欲求が満たされない
・社会そのものについていけずやりたいことができない
・親子間での立場の逆転など
・収入の減少
・転居
・家族との死別
ここでは高齢者ならだれにでも起こりうる「身体の変化」にスポットをあてイライラを緩和させる方法を紹介します。
高齢者の身体に変化が起きる大きな要因に「老い」があります。
若い人であれば病気になっても病院に通い治療することで改善が望めますが、高齢者の場合は慢性的な病気を複数抱えていることもあり、必ずしも改善するとは限りません。そもそも、老いによる身体の変化は治療することができるものばかりではないので根本的に解消することが難しいと言えます。
身体の良くないほうへの変化を解消できるのであればそれが一番ですが、それが難しい場合は、視点を少しだけ変えてみて、身体の変化によって心にダメージを受けている高齢者の「心のケア」に取り組んでみるのもひとつです。
以下、ご家族様にやっていただきたいことをピックアップしました。
1 安心して過ごせる環境を整える
・室内は明るくする(日光を入れる・電気をつける)
・室温を調整する(夏は28℃、冬は20℃を目安にエアコンなどを使う)
・室内の湿度は40~60%に調整する
(湿度が40%を下回るとインフルエンザウィルスなどが活動しやすくなり、60%を上回るとカビやダニが発生しやすくなります。)
・親の好きな音楽を流す
→これらはやろうと思えばすぐできます。すぐやってください。
2 親に合わせる
・高齢になると難聴の方も多いので、耳の聞こえ具合に合わせてゆっくりと話す
・高齢者は視界が狭くなっていることがあるので、正面から話しかけ表情や口の動き、身ぶり手ぶりがわかるようにする
・親の身体状態に合わせてゆっくりと行動する
・親に合わせることに気を向けすぎて子供に接するような態度や行動をとらないようにする
→やっていれば慣れますので、やってください。
3 親の気持ちを大切にする
・否定しない
・怒らない
・無理強いをしない
※病気より幻視や幻聴、妄想といった症状がある場合は特に上記の3つに注意してください。
・親の気持ちを受け入れる・共感する
→心のエネルギーが必要になります。
ちょっとずつ慣れていってください。
共感と肯定の記事が参考になります。
心のケアは主たる介護者であり長い時間を一緒に過ごす家族が行なうことで大きな効果を発揮します。
人の心を支えるということは縁のない他人が簡単にできることではなく、親の心の側にいる家族だからこそできることです。
イライラの原因を理解しながら、大切な親の心を優しく支えリラックスして過ごせるようにサポートしてみてください。