2020/05/02
高齢者の「やることがない」は避けなきゃいけないよね、という社内の会話です。
こういったことを大真面目に考えながら、高齢者福祉事業をつくっています。
緩やかな「やらなければならないことがある」状態は、やっぱりいいことで、高齢者は徐々にそれがなくなっていきます。
―― 男性の方もそうですけど、女性の方って、やっぱり現役世代と一緒で、体絞れたら嬉しいって思うものなんですか?
それこそ人によりますね。気にされる方もいますし、もう全然無頓着な方もおられますし。一概に若い頃のように皆がみんな、体型を気にされたりとか、逆に口にそういうことを出されなくなる方が多いのかもしれないです。
―― じゃあそこが必ずしも1番ではなくて、やっぱり体が動けるようになるとか、何て言うかそれこそ旅行に行けるような足腰を取り戻すとか、機能性を重視することのほうがモチベーションとしては高いですか?
そうですね、高齢者の方ってたとえば体を絞るだとか、体力をつけるとかよりも、本当にもっと人間としての本能的な欲求のほうに気持ちがいっちゃいます。睡眠だとか、特に食事。好きなものを好きなように食べて生活したい。それで、多少太ろうが痩せようが、そういうことよりも、好きなもの食べて満足して、おいしいもの食べて暮らしたいっていうほうに重点がシフトされる方が多いですね。
―― ネガティブな見方すると、あまり気にしなくなるということですね。
気にしなくなりますね、世界がやっぱり限定的に、今の自分の身体能力だとか、認知能力に合わせて、自然とちっちゃくなっていくっていうのもあるかなと思います。ただ、やっぱり社会参加しないと、してる人としてない人とでは、理解力だとか、容姿に関することだとか差は確実にあります。
―― やりがいというか、「やることがある」状態って高齢者にとって大切だと思います。実際、お仕事を引退されたら、特に男性はそうかもしれないですけど、何かね、やることが本当にない方いそうですもんね。
いると思います。
―― 朝起きて、別に用事ないので起きなくていい状態というのは避けた方がいいですね。そういう意味では、何をやるにしても、ポジティブな意味でのストレスって絶対あるじゃないですか。だから一定程度のストレスがかかるような状況も生活の張りを考えると必要だと思います。
そうですね、ある程度のところのストレスはきっと人間に必要なところなのでしょうね。やる気を出したりだとか、そういう意味でも。
―― 緩やかな「やらなければならないことがある」状態は、やっぱりいいことで、高齢者は徐々にそれがなくなっていきます。
なくなっていきますね。自立を促す、自立した生活のためには役割だとかを取っちゃわない、むしろ本人の考えに合わせつつ、増やしていく必要があります。1つでも2つでも。
―― やることがないのを好む人っていないですよね?
そうですね。やることが全くなくなっちゃうっていうのは、それは人間らしい生活とはやっぱり程遠いと思います。
―― よく年配の方、犬飼って朝散歩させたり、夕方散歩させたりとかするのは良いことですね。結構リアルな話で、認知症進んでらっしゃる方が、危ないですけど、1人で犬の散歩行くじゃないですか?ちゃんと連れて帰ってきてくれますもんね。
そうかもしれないです。犬は賢いらしいんで、家にちゃんと帰るようにできてるんです。
―― いい組み合わせですね。
生活の質だとか、認知的なところでは、犬の存在はとても意味のあることだと思います。
―― 高齢者の方に運動してもらうためには、自身が、この運動をしてどうするのかっていうその、1つ先のことをイメージするですとか、やることを見つけるとか、そういうことって、本人1人じゃ無理だなと思います。
恐らく、無理ですね。やっぱり、認知機能と身体機能が低下し、徐々に世界が狭くなってきていますので、1人で見つけるのはなかなか難しいと思います。
―― 「趣味を持ちましょう」っていうのもおかしな話で、趣味って持とうとして持つものじゃないというか、その興味自体がわきづらくなってきてるのが高齢者ですもんね。手っ取り早いというか、1番スムーズなのは仕事をすればいいのですが、問題は70代、80代で社会に活躍の機会があるかどうか。
お年を召すとそうですね、ボランティア系に行きますけど、ボランティアもその人その人で、合う合わないがかなりあるので、一概に何とも言えないとこはありますけども。でも仕事はあったほうがいいと思います。
―― たぶんボランティアって嫌がる人もいそうです、行きたがらないというか。
多いです。男性は特に多いですね。
―― 男の人はお仕事引退したら何かもう、本当に終わってしまいます。他への気力がないというか。
定年するまでの仕事で人間関係だとか、活動面においても、もうすべて出し切っちゃった感が。
―― シルバー人材センターへ登録すれば、と思いますが、仕事が定期的にないですもんね。もうちょっと仕事の頻度が高ければいいんですけど。
近年は、大きい企業さん、たとえばマクドナルドとかも、あそこ確か高齢者雇用に積極的に取り組んでますし、地域密着のスーパーなども構高齢の方が働いているケースがあります。
―― マクドナルドいいですね。店員さんが皆さん70歳以上で、ハンバーガー注文してから出てくるまでもすごいゆっくりのスローフードみたいな感じでそれはそれでありだなと思いました。行ってみたい。その辺の何かを見つけてもらえればと。だから、気軽に高齢者に「やること見つけなきゃだめだよ」ではだめで、見つけられる環境を周りが作る、土壌を作るということですよね。
サポートをするうえで、高齢者の方のこれまでの経験や趣味、そういったものが真ん中に来るようにする必要があると思います。
―― ガッツリ仕事するのは実際大変だと思いますので、週2日とかでも仕事をする機会があるっていう、それが社会の普通みたいになったらいいですね。
だいぶなってきていて、今後、結構な勢いで増えていくんだろうなあと思います。高齢者自体の意識もきっと変わるはずですし、
―― あとはどうしても高齢の方なので、動きがスローなので、それを許容できる空気ができてほしいところかなと思いますね。